処遇指標(収容分類級)の詳細について
刑務所では、受刑者の特性に応じて様々な処遇指標があります。
処遇指標とは、受刑者に対する矯正処遇を行なうにあたり、処遇が適切に実施できるよう、受刑者の特性・適正に応じて収監先の刑務所や、収監後の処遇方針を定めるためのものです。
1番わかりやすい例を挙げると、女性受刑者はW、外国人受刑者はFに分類され、女性受刑者はW指標に対応した刑務所に服役することになり、外国人受刑者はF指標に対応した刑務所に服役することとなります。
なお、昔は処遇指標のことを「収容分類級」と呼んでおり、その名残から今もなお通称「分類」と呼ばれることが多いです。以下、当サイトでは処遇指標と書きますが、処遇指標=分類とご理解いただければと思います。
符号 | 受刑者の属性 |
---|---|
D | 拘留受刑者 |
Jt | 少年院への収容を必要とする16歳未満の少年 |
M | 精神上の疾病または障害を有するため医療を主として行なう刑事施設等に収容する必要があると認められる者 |
P | 身体上の疾病または障害を有するため医療を主として行なう刑事施設等に収容する必要があると認められる者 |
W | 女子 |
F | 日本人と異なる処遇を必要とする外国人 |
I | 禁錮受刑者 |
J | 少年院への収容を必要としない少年 |
L | 執行刑期が10年以上である者 |
Y | 可塑性に期待した矯正処遇を重点的に行なうことが相当と認められる26歳未満の成人 |
A | 犯罪傾向が進んでいない者 |
B | 犯罪傾向が進んでいる者 |
※AとBは、全ての受刑者にどちらかの符号が付けられます。
処遇指標(収容分類級)の詳細
処遇指標には、様々なルールなどがあります。
詳細は以下のとおりです。
受刑者の属性の表示の基本的ルール
受刑者の属性に関する処遇指標は、ダブる符号は結合して表示されます。
例えば、26歳未満の受刑者で犯罪傾向が進んでいない場合はYAとなります。
また、女子受刑者の外国人で犯罪傾向が進んでいる場合はWFBとなります。
表示の際の順序としては、D,Jt,M,P,W,F,I,J,L,Yの順に表示することとし、最後に犯罪傾向を表すAかBのいずれかを表示します。
処遇指標AとBの判定基準
AとB指標の判定には様々な事情が考慮されますが、主な判断材料となるのは以下のとおりです。
- Aの判定基準
- 1.児童自立支援施設または少年院での収容歴が1回限りで、かつ刑務所での受刑歴がない。 あっても出所後に悪質な犯罪行為が無く5年以上経過している。
- 2.反社会性集団(暴力団など)へ一度も所属したことがない。所属したことがあっても周辺の構成員で、かつ所属期間が1年未満である。
- 3.受刑に至った犯行が偶発的または機会的な場合。
- 4.最近1年以内に、著しい薬物・アルコール等の依存、放浪・徒食癖などがない。
- Bの判定基準
- 1.児童自立支援施設または少年院への収容歴が2回以上ある。または刑務所での受刑歴があり出所後5年未満。 5年以上経過していてもその間に悪質な犯罪行為がある。
- 2.反社会性集団の中心的構成員である、または周辺構成員であっても所属期間が1年以上の場合。
- 3.受刑に至った犯行が慣習的または計画的な場合。
- 4.最近1年以内に、著しい薬物・アルコール等の依存、放浪徒食癖などがある。
その他の処遇指標の判定基準
- 1.Dの判定基準
- 拘留受刑者のうち、懲役または禁錮の刑に引き続いて拘留の刑の執行を受ける者、および拘留の刑の執行に引き続いて懲役または禁錮の刑の執行を受ける者を除く。
- 2.Jtの判定基準
- 16歳未満の少年のうち、義務教育未修了のために主に教科教育を必要とする者、心身に著しい故障があり専門的医療措置を必要とする者、その他少年院における矯正教育の効果が期待できる者とする。ただし、少年院に移送した後16歳に達するまでの期間が3月未満の者、および矯正施設における逃走歴があるなど少年院での処遇上著しい支障が認められる者は除く。
- 3.Fの判定基準
- ア.日本語の理解力もしくは表現力が不十分なこと、または日本人と風俗習慣が著しく異なるため日本人と同一の処遇をすることが困難な者。
- イ.「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」に基づく合衆国軍隊の構成員および軍属並びにこれらの家族並びに「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定」に基づく国際連合の軍隊の構成員および軍属並びにこれらの家族 。
- 4.Yの判定基準
- 26歳未満の成人とする。ただし26歳未満の成人のうち、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員である者、および可塑性が低いと認められる者は除く。
矯正処遇の種類と内容
受刑者は、矯正処遇という、各受刑者の特性に応じた処遇を受けることになります。
「受刑者の属性」と「矯正処遇」はまた別です。
種類 | 符号 | 内容 | |
---|---|---|---|
作業 | V0 | 一般作業 | |
V1 | 職業訓練 | ||
改善指導 | R0 | 一般改善指導 | |
R1 | 特別改善指導 | 薬物依存離脱指導 | |
R2 | 暴力団離脱指導 | ||
R3 | 性犯罪再犯防止指導 | ||
R4 | 被害者の視点を取り入れた教育 | ||
R5 | 交通安全指導 | ||
R6 | 就労支援指導 | ||
教科指導 | E1 | 補習教科指導 | |
E2 | 特別教科指導 |
矯正処遇の表示の基本的ルール
矯正処遇は、特に指定がある場合を除き、受刑者の属性符号の前の部分に括弧書きで表示されます。
※(V1)YAなど。
複数の種類の矯正処遇に該当する場合は、V(作業)、R(改善指導)、E(教科指導)の順番で表示します。
※(V0,R0)や(R1,E1)など。
R(改善指導)の中で複数の種類に該当する場合は、数字の若い順番で表示します。
たとえば、R1(薬物依存離脱指導)とR2(暴力団離脱指導)とR4(被害者の視点を取り入れた教育)の3つが該当する場合は、(R1,R2,R4)と表示します。